主人ハムを乗せた車椅子が周回し、昔話が語られる…ちょっと能舞台みたいなベケット空間で交わされるいかにもな会話。
ハム:私の位置に戻せ!
クロヴ:(車椅子を中央に)
ハム:ここが私の位置か?
クロヴ:はい、ここがあなたの位置です。
ハム:ちょうど真ん中にいるか?
クロヴ:測ります。
ハム:多少はずれていい!多少は!
クロヴ:(少しだけ動かし)はいここ!
ハム:多少なりとも真ん中に?
クロヴ:そう言いましたけど。
ハム:そう言ったけど!ちょうど真ん中にして!
クロヴ:メジャーを取ってきます。
ハム:大体でいい大体で!
クロヴ:(少しだけ動かす)
ハム:ドンと中央に!
クロヴ:はいここ!
(間)
ハム:少し左に寄ってる気がする。
〜サミュエル・ベケット Edgame, 1957
何を舞台上でやってんだか。窓から外を見ると近づいてくる若者、舞台端にはドラム缶に入った老いた両親…それは「動けるもの→動けないもの」のリレー。それぞれの「位置=place」が層を成している。