ユリオカ超特Q×故林対談

ユリオカ超特Qと故林広志が深い所で組む—The 6th kinu。
ベタに潜む「いい言葉」

[ユリオカ超特Q blog]

 ピン芸ブーム。御覧の通り。

ユリオカ:あるあるネタっていうのがねえ・・どうも。
故林:ユリオカさんは描写で終わってない。辞書ネタとかも。

 共感で笑いは起きるけど、素人には出来ない何かってことになると・・

ユリオカ:素材をどう掘り下げるかですから。後のコメントで笑いを取る。
故林:いい素材といい腕、共感は素材のレベルで十分なのかも。

 「漫談ならユリオカ」と言われるようになりたい、と以前雑誌インタビューで答えていたユリオカ超特Qさん。絹初登場。「練り込む」って理念と「漫談」。演技と素。あるいはそんな単純な対立項では捉えられないもの・・9月いっぴ、渋谷某所で絹に向けての打合せ対談。プロデューサー木村万里さんも同行。

木村:故林さん、ほら言ってたじゃない。こんなネタやってもらいたいって。
故林:あー『ユリオカ漫談誕生の経緯』ってやつ。あの、幾つかの漫談・・アメリカ風とか、ブラック過ぎたり、政治色強過ぎたりとか、試行錯誤をあえて見せていって、最後の瞬間今のユリオカ超特Qの漫談に辿り着くって15分。
ユリオカ:いや実際、最初は試行錯誤でしたから。最初コンビで漫才やってて、相方が逃げたんで、新しい相方探しつつ漫談で出て行こうって話だったんですよ。(苦笑しながら)ピンでやった最初の録音とか聞いてみるともう・・今よりもっと早口で、聞いてて息苦しくなってくるんですね。お客が笑わないから余計焦る。で、そういう時って最後に「今日はユリオカ超特Q、お客を乗せずに走ってしまいましたー」って言ってそこだけウケたり。
木村:それで「超特急」って言うの?
ユリオカ:い、いや、ホントはヒッチコックの映画の題名から取ったんですけど・・みんな知らないだろうし、まあ

 ちなみにユリオカは本名(百合岡英之)。

故林:最初、たしか大竹まことさんに弟子入りに行ったとか。
ユリオカ:それはホント最初で、大阪でサラリーマンやってた頃に『ヤングタウン』ってラジオにハガキ書いて。ダメだったんでJCA(人力舎の養成学校)に入ったんです。10年以上前ですね。
故林:僕はその頃関西で。漫才台本書いたり・・『爆笑ブーイング』(関西TV)の時代ですよね。
ユリオカ:見てました見てました。あの、おんなじ大学なんですよね。

 二人とも京都の立命館大学、しかも年令は故林が2つ上で思い切り同時期。

ユリオカ:学部どこでした?私は産業社会学部で。
故林:文学部、隣の校舎だ。自作のコントを始めたのが学内の劇団の人となんですよ。今MONOの土田君、水沼君。
ユリオカ:それがGOVERNMENT OF DOGS。
故林:その前に立命演劇祭典っていうのに出たり。あとRBC(放送部)主催のステージでもコントやったな。
ユリオカ:私はその頃プロレス同好会で実況やってましたよ、
故林:あっ!あのプロレスはすごい人気あった!よく見てたよー、レベル高かったよねショーとして。大学レベルじゃなかった。
ユリオカ:演劇もブームでしたけど、学園祭は色々大物呼んでませんでした?米米CLUBとか
故林:そういやプリンセスプリンセスとか呼んでしまって近隣と揉めてたな(笑)・・あと今から思うと面白いのが、野球部主催で「キミも長谷川君
・古田君の球を打とう!」って企画を中央グランドでやってた。

ユリオカ:今片やメジャー、片やストのリーダーですから。
木村:ストなんか、ねえ。

故林:わざわざストしなくても客席状況おんなじだよ、近鉄は・・なんて。 

 話はお客さんとの関係作りのことへ・・

ユリオカ:お客が何を期待して見に来るのかっていうのは考えますね。自分の場合は喋りだろうって、最近単独ライブじゃ90分出づっぱりで喋ってるんですよ。
木村:はけない。
故林:今回は持ち時間15分、TVじゃやり切れない部分をやってもらってもいいし、これを機会に新しいことを開拓してもらったり。
ユリオカ:漫談って、漫才と違ってそんなスタイルって無いんですよ。役になり切っても出来るし。こないだオンエアバトルでハゲのネタをやったんですけど、こういう自分がネタにするべきって(笑)。で、故林さんにヒントもらって深めようかなって今日実は楽しみに来たんですよ。ハゲって言うとみんな「またベタな~」って顔するかもしれないけど、そういう表面的なことじゃなく、「目前にして気まずい」関係とか、「悩んでるのにおかしい」皮肉とか、結構深いんですよ。カツラなんてもう一つ深いでしょ。
故林:なんであんなに微妙な注目を集めちゃうんだろう。まあいや、一つ『厚着』してるだけなのにね。そうそう、私も漫才でハゲネタ書いてたなー『ヘディングシュートしたらカツラとボールとが同時に飛んで行き、キーパーがカツラの方をキャッチしてしまい点が入った』なんて。カツラの人は野球拳が少しだけ有利、とかね。

 客層にもよるだろうけど無邪気なギャグ。

ユリオカ:ハゲヅラなんてもう哲学ですから。カツラの人を見ると周りの人は気を使うっていうけど、カツラ本人がその何倍も気を使ってるって言うんですよ!
故林:タブーっていうのは笑いの起源。どう取るかによってその共同体の本質が見えちゃうというか。
ユリオカ:揶揄したりバカにしたりって薄いギャグじゃなく・・ま、ハゲが嫌がる言葉で「うすうす」っていうのもありますが(笑)・・こう、本質的な視点というか。私はハゲを応援しますよ。ま、ヤな言葉で『はげます』っていうのもありますが(笑)。
木村:ネタになってきましたね。
故林:言葉の感触って当事者でないとわからない。
ユリオカ:前にアンケートに『いい言葉』を書いてくれた人がいましてね、「私もハゲですが、ユリオカさんのハゲネタを聞いて思いました・・ただハゲてはいられない」と。
故林:かっこいいなー。『もう頬づえはつかない』みたいだ!ATGの映画タイトルみたいだ!
ユリオカ:この機会にそういう本質的なものをじっくりやってみたいと思ってたんですよ。
故林:いやーそう言ってもらえると。お客を何かに見立てたり、入れ子構造にしたり、いい意味でお客を混乱させましょう。ユリオカさんの話術があれば!
ユリオカ:幾つか箇条書きの形でメールしますんで、来週会って詰めましょう!

—-ということでまた新しい見どころを増やすことになった絹。いろんな笑い、それに対する素人意見が訳知り顔でペラペラ飛び交う時代に漫談のユリオカ超特Qが故林とディープな作戦会議だよ。