毎日グラフ評

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脱吉本の切り札!ガバメント・オブ・ドックス

「吉本の笑い」一色の関西にあって、アドリブを排しコントの内容だけで勝負しようとするストイックな集団がある。
 ガバメント・オブ・ドッグスである。彼らの新作公演「早すぎた半袖」(作・演出故林広志)を見るため4月12日、扇町ミュージアムスクエアフォーラムに足を運ぷ。90分の間にオムニバスのコントを12本盛り込み、途中2回ばかり手の込んだ映像を流すというやり方はなかなか刺激的だった。
 12本のコントすべてが面白かったわけではないが、退屈なコントは1本もなかった。
 とりわけ、「他人の言動にBGMを付ける男」「存在感がなく友人や店のウエイターにまで無視され続ける男」「詩集『愛の男』をなくしてしまい大騒ぎになってしまう男」といったコントはいずれも完成度が高く、故林広志のコント作家としての確かな可能性を十分に感じさせてくれた。
 エディ・B・アッチャマンをはじめ6人の男優それぞれに個性があるため、キャラクターにそったコントを簡単に作れそうなものだが、それをやらず、あえて役者A、役者Bにこだわり続けるところにガバメント・オブ・ドッグスの「非吉本」としての存在価値がある。
 この日の客席の反応は正直言って鈍かった。骨の髄まで「吉本」に侵された感覚はなかなかオムニバスのコントを受け入れようとはしないようだ。
 けれども、故林広志の志向するコントが、知的で洗練されたコントとして認知される日は必ずやってくるはずだ。
 そのためにも、住み慣れた京都を離れ、4月から束京に移り住むのは大いに意味あることだと思う。何としても、故林広志には次代を背負うコント作家になってもらいたい。