松田正隆 故林さんの笑いは、秩序づけられていた我々の世界像を解体すること故にひきおこされる困惑である。リズムと間や連射砲のように連発するギャグで笑わそうとする全体主義的「お笑い」とは違う。それはもはや笑いではなく痙攣である。観客と舞台が笑いで一体化するなどという気色の悪いこともない。新しき希望を提示するでもなく、意味づけられぬ「何か」がひょっこり顔を出す。困惑せざるを得ない。笑って誤魔化そう。
ラーメンズ 小林賢太郎 初めて仕事をご一緒させていただいた時、小林同士かと思ったら「亡くなった林さん」みたいな名前で、このニセモノめ、と思ったものです。氏の作品は、遅くて重いパンチを打ってくる感じがして、僕は好きです。
拙者ムニエル 加藤啓 今回は学校のお話らしい。そういえば故林さんは何だかとても先生っぽい。その先生感を何よりも醸し出しているのは、彼の右耳にフックの要領で引っ掛け、そのまま曲がりくねりながら鼻の上を立体交差して最終的に左耳にまたフックの要領で引っ掛けてあるつるの様な物、そうメガネだ。話によると故林さんのメガネのつるは、本当に植物のつるを使ってるらしい。意外にも普通のメガネより丈夫で体に馴染むのだそうだ。ただ、耳がかぶれたり、メガネ自体枯れてしまう事があるにはあるが、「それがそんなに気になるなら、コンタクトすれば」と故林さん。納得である。
王子小劇場 玉山悟 年に100本とか200本とか芝居を見ていると、だんだん頭がおかしくなってくるのですが、そんなときに故林さんの「涼しい顔して全力で狂気」な作品を見ると、「ああ、自分はまだ正常だな」と安心できるのです。